メダカ業界では、当たり前に飛び交う「塩浴」という言葉。
しかし、未経験者からすると、意外に謎に包まれています。
そんな塩浴について、失敗しない塩浴のポイントをこれまでの経験則も踏まえご紹介いたします。
※本ページはプロモーションが含まれています
病気になったメダカを「塩浴」する目的とは?
病気のメダカに塩を添加する目的とは何でしょう。
- 殺菌効果のため
- ミネラル補給のため
- 刺激を与えるため
上記のいずれでもなく、病気のメダカに塩を添加する最大の目的は浸透圧調節の負担を軽くしてやること。
浸透圧とは?
薄い液から濃い液のほうへ、境にある半透膜を通って溶媒が移っていくときに生じる圧力。浸透圧は、両方の液の濃度の差に比例する
引用:キッズネット
ナメクジに塩をかけると、体内の水分を塩に奪われてシボんじゃうよね。あの現象が浸透圧だよ!
メダカの体内の塩分濃度はどのくらい?
- メダカの体内:0.9%ほど
- 淡水:0.05%以下
淡水よりも、メダカの体内の塩分濃度の方がざっと18倍も高いため、水分が体内に入ってきやすく、体の塩分濃度が薄まってしまいやすいんだね
メダカは、浸透作用で吸収した不要な水分を常に排出しなければならず、この働きを浸透圧調節と言います。
淡水魚であるメダカは、体内の塩分濃度が薄まってしまわないよう…
- 水をほとんど飲まない
- 浸透作用で吸収した水を尿として多量に排出
- エラからわずかな塩類を吸収
といった、浸透圧調節を常に行っています。
飼育水の塩分濃度を上げれば、メダカの体内の塩分濃度(0.9%)に近づくため、浸透圧を弱めることができます。
つまり、病気になったメダカを「塩浴」する最大の目的とは、
浸透圧調節の負担を軽くしてやること
浸透圧調節の負担が軽くなれば、体力を温存しつつ、病気の治療に専念できそうだよね!
メダカに塩浴と薬浴を同時にしても大丈夫?
メダカへの塩浴&薬浴の同時併用は可能です。
塩と薬が水に溶けて混ざったとしても、メダカに悪影響を及ぼす特別な物質に変化するようなことはありませんし、塩と薬とではその目的も違っています。
- 塩浴の主な目的:メダカの浸透圧調節の負担を軽くしてやる
- 薬浴の主な目的:原因となる菌・カビ・虫を退治
ただし、いつもより塩分濃度が高まった上に、薬まで添加されるとなると、メダカにとって水質変化による負担は決して軽くないはずです。
塩浴と薬浴を同時にやるときは、少し時間をかけながら塩・薬を添加してあげるといいよ!
塩浴&薬浴の全ステップを画像付きで詳しく解説
メダカを塩浴するときの濃度と計算方法
塩浴するときの塩分濃度は0.5%が推奨されます。
塩の添加で浸透圧調節の負担が軽くなるとはいえ、やはりメダカは淡水魚。
塩分濃度0.5%というのは、メダカの負担が少なく、かつ細菌も死滅しやすい塩分濃度なのだとか。
メダカに病気をもたらす多くの細菌の体内が塩分濃度0.35%ほどと考えられていて、水の塩分濃度がそれよりも高くなると、ナメクジに塩をふったときのような状態になるんだと思うよ!
メダカに付着した水カビが、0.5%の塩浴で剥がれ落ちるのを何度も経験しました。
カビが死滅したものと思われます。
「細菌」と「水カビ」とでは、生物としては異なるんだけど事例として挙げてみたよ!
病気になったメダカを塩浴するには、塩分濃度0.5%の水をつくらなければなりません。
塩分濃度0.5%の水 = 水1L + 塩5g
メダカを塩浴するときに必要な塩の量を知りたいとき、まずは塩浴に用いる容器から、必要な水量を知ってください。
たとえば、総量4Lの容器で塩浴するとして、その容器の8分目まで水を張るなら必要な水量は3Lほど
次に、3Lの水を塩分濃度0.5%するには、15gの塩が必要です。
必要な塩の量を知りたいときは、以下の方程式の3の部分(塩水にしたい水の量)を、任意の水量(L)に置き換えて計算してください。
必要な塩の量(g)をすぐに算出いただけます。
塩の重さをはかりたいとき便利です
塩5gがどのくらいの量かビジュアル的につかんでおくと、水換え時に塩を添加するときなど、「この水槽にこのくらいなら全然大丈夫!」とか瞬時に判断できるようになるよ!
メダカを塩浴する水はカルキ抜きすべき?
結論から言うと、絶対にカルキ抜きしてください!
正確には「塩素抜き」と呼ぶべきかも…
「カルキ」と「塩素」の違いは?
- カルキ=次亜塩素酸カルシウム
- 塩素=次亜塩素酸ナトリウム
現在、水道水に含まれるのは「次亜塩素酸ナトリウム」の方なので、「カルキ抜き」ではなく「塩素抜き」と呼ぶのが正しい表現と思われます。
塩素はメダカに悪影響を及ぼします。
- エラが傷つく:呼吸困難になるおそれ
- 粘膜が剥がれる:病気にかかるおそれ
メダカの病気を治療するための塩浴に、塩素の含まれた水道水を使うのは、薬と思って毒を飲むようなもの。
メダカの塩浴では、塩素(カルキ)が含まれた水は絶対に避けてください!
メダカを塩浴するときの水温は?
水温が低めよりも、メダカの適温の範囲内で高めがおすすめ。
※メダカの適温:25~28℃
つまり、塩浴時の水温は28℃がおすすめ!
高めの水温がおすすめな理由はこちら
- メダカの代謝を上げ免疫力を上げる
- 病原菌や寄生虫の活性を鈍らせる
ただし、病原菌の活性を鈍らせるという点において、必ずしも28℃が好ましいと言えないので注意してください。
たとえば、尾ぐされ病の病原菌であるカラムナリス菌は、水温27℃以上で活性が極端に下がると言われる一方、穴あき病・松かさ病などの原因菌である「エロモナス菌」は、水温25~30℃で繁殖力が高まると言われます。
水温28℃を好む病原菌もいるということ
とはいえ、塩浴の最大の目的が「浸透圧調節の負担を軽くしてやること」にあるならば、菌への直接的なアプローチは塩や薬に任せ、メダカの状態を上向かせることに重きをおくべきだと考えます。
メダカを塩浴するときの水温は、少し高めの28℃がおすすめです。
メダカの塩浴は普通の塩でOK
メダカの塩浴に用いるのは普通の塩でOK、ただし、無添加の塩を選ぶようにしてください。
「無添加の塩」とは、以下のような物質が製造過程で人工的に加えられない塩です。
- 塩化カリウム
- 炭酸マグネシウム
- 炭酸カルシウム
- クエン酸鉄アンモニウム
固結防止や栄養強化といった目的で、上記のような物質が人工的に加えられることがあります。
※そもそもの成分としてのカリウム・マグネシウム・カルシウムは問題なし
メダカは生き物だから、塩浴に用いる塩は自然に近いものを選びたいよね!
「塩化カリウム」が人工的に加えられた塩の例
「炭酸マグネシウム」が人工的に加えられた塩の例
「炭酸カルシウム」が人工的に加えられた塩の例
無添加の塩の例
以前、メダカブリーダー監修の粗塩を使っていました
良い商品だと思うのですが、少し割高に感じました。
ただし、1kg入りであればコスパは決して悪くないようです。
現状、使っている岩塩はこちら
塩浴はもちろん、定期的な水換え時にも少量を添加して、メダカの発色も揚がったような気がします。
メダカの塩浴にエアレーションは必要か?
メダカの塩浴ではエアレーションをおすすめします。
エアレーションすることで、小さな容器での塩浴が可能となるから。
たとえば、3Lの水量で塩浴した場合、
- 0.5%の塩分濃度
- 毎日2/3の水換え
- 7日間の塩浴
で必要になる岩塩は75g
それに対し、9Lの水量で塩浴した場合に必要になる岩塩は3倍の225g
1袋の1/4以上の岩塩が必要になります
水温高めの28℃で塩浴する場合、酸欠も心配されるところ。
水温が高まるほどに、水中に溶け込める酸素量は減少します。
水温 | 水中に溶け込める最大酸素量 |
---|---|
15℃ | 約10mg/L |
25℃ | 約8mg/L |
多くの魚が生息できるのは、溶存酸素量5mg/L以上と言われます。
小さな容器で塩浴する場合、エアレーション無しでは、溶存酸素量5mg/L未満に陥る可能性が高いでしょう。
ともあれ、エアレーションのメリットは色々ありますが、高価な塩・薬が少なくて済む、小さな容器で塩浴できるのが最大のメリットです。
薬浴も併用する場合、魚病薬には紫外線で分解されて効果が弱まるものも多いため、屋内に移動するのも小さな容器だと楽ちん!
メダカの塩浴の期間は?
メダカの塩浴に決まった期間はありません。
メダカの状態をよく確認しながら、状況に応じて判断してください。
ただし、これまで塩浴・薬浴を行ってきた経験で言うと、治療できたケースでは7日間ほどの塩浴期間が多いです。
塩浴や薬浴、もしくはその同時併用において、罹患した病気の種類、開始するタイミング、塩や薬の使用量などが適切だった場合、5日も経てば大きな改善が見られます。
水カビ病を発症したばかりのメダカ
塩浴&薬浴を開始して5日後のメダカ
腹ビレに病気を疑われる箇所が見られます。
まだ完治はしていなくて、ここで通常環境に戻してしまうと、病気がさらに深刻化してしまうことがあるんだよね
一見、病気が完治したように見えても、個人的には7日間は塩浴・薬浴を継続するよう意識しています。
ただし、あまりにも期間が長過ぎると、逆に塩浴・薬浴がメダカの負担になってしまうので注意してください。
塩浴中はメダカに餌を与える・与えない?
塩浴中のメダカには、餌を与えないことが推奨されます。
- バクテリアが発生していない状況では、水質が悪化しやすい
- 消化による負担がかかる
といった理由が挙げられます。
しかし経験上、毎日水換えしながらであれば、塩浴中に少量の餌を与えたとしても、水質悪化の影響はほとんど見られません。
それに7日間も塩浴を継続するとなると、餌を食べないことによるメダカの体力低下が心配です。
特に病気を発症する前まで餌をしっかり摂っていた個体には、塩浴の開始から3日後くらいには餌を少しだけ与えるようにしているよ!
塩浴の開始から3日後くらいには餌を少量与えてみて、食欲があるかどうかよく観察してみることをおすすめします。
ただし、メダカの状態にもよるため、事前の状態チェックが欠かせません。
塩浴中の水換え方法と元の環境への戻し方
塩浴から元の環境へ戻すときは、初めてのメダカを迎い入れたときの「水合わせ」と同じようにして、戻す先の水にゆっくりと慣らしてあげてください。
塩浴に限らず「水合わせ」で意識すべきは2つ。
- 水温
- 水質
まずは塩浴中の水と、戻す先の水の水温を合わせます。
塩浴の水ごとメダカをボウルなどに移して、戻し先の水に浮かべておくと水温が同じになるよ!
次に、塩浴の水の大部分を捨てて、時間をかけ数回に分けながら戻し先の水を足していくことで、戻し先の水に慣れてもらえます。
その際、初めてのメダカを迎い入れたときの「水合わせ」を意識してください。
【最後に】失敗しないメダカの塩浴!
メダカの塩浴について、
- 塩浴の目的
- 薬浴との同時併用
- 濃度とその計算方法
- カルキ抜きについて
- 普通の塩でOK
- エアレーションの有無
- 塩浴の期間
- 餌を与えるべきかどうか
- 通常環境への戻し方
といった内容について、経験則も踏まえお伝えさせていただきました。
上手に塩浴できると、病気の手前で予防できたり、大切な一匹を失ったりせずに、メダカライフを満喫できます。
ぜひ、ご紹介したポイントを抑えつつ、あなたのメダカライフに効果的な塩浴を取り入れてみてください!